気がつけば大人になってた



 松原:こんな私でもスタイリストさんや
    ヘアメイクさんから作品見てくださいって
    沢山メールがくるんだよね。
    HPを見ても、実際にその人に会ってみないと
    一緒に仕事できるかどうかってわからない。
    でも全員に会っていくのはすごく大変で、
    もし本当にその人ができる人だったら、
    絶対どこかでその名前が聞こえてくるはずだから、
    私はその時に一緒に撮影できたらいいやと思ってる。
    だから若い人たちや作品見て下さいって連絡くれる人たちの
    可能性をひっぱり上げることを全然してなくて。


 河村:うんうん。


 松原:ま、面倒くさいだけなんだけど、時間もないし。
    なんかうまく言えないけど。


 河村:いや、すごく分かる。今日のハイライトや。


 松原:あはは。


 河村:その会いませんって言えることが
    私は最近愛情だって思ってる。
    結局、抱えられないくせに良い大人ぶって、
    中途半端に抱えて最後に自分が辛くになるのが
    一番あかんことだって思う。


 松原:あー。


 河村:私は人に相談されることが多くて
    最初は本当に力になりたいって思って真剣に聞くんだけど、
    それがずっと毎回だとじわじわと疲れてくるんだよね。
    で疲れが限界にくると、ちょっとずつ距離を置いてしまう。
    結局救えないなら良い大人ぶらなきゃよかったのに。


 松原:うん、うん。


 河村:だからまっちゃんが今言ったことはすごく理解できる。
    昔だったら、私自身作品見てほしくて
    メールする側だったから、
    なんで返信くれないんだろう?って思ったりしたけど、
    今は忙しい人の本気の忙しさもちょっとは想像できる。


 松原:あ、でもみんな常に若い人は探してるんだけど、
    例えば、誰かが引き上げてくれたとしても
    そこで力がすぐに発揮できなかったりして。
    結局、回数をこなさないと自分が好きな世界観も
    完成できない。
    作品撮りだって圧倒的にうまくいかないことの方が多いし。
    今は、私たちの時よりもずっと勉強したり試したりする場所
    が少なくて大変だろうなとは思ってる。


 河村:あーどんどん厳しくなってるのかな。


 松原:若い人から聞くのは、試す場所が海外の変な雑誌とか
    になってしまうと全然お金もらえません、みたいな感じで、
    それでもってお金がない仕事ばっかりやってると
    結局自分がやりたいことが
    わからなくなってくるから続かないって。


 河村:お金って実はすごく大事だと思う。
    それでもなにかアドバイスとか、
    経験から言えるようなものあったら。
    多少、きつい言葉でも聞いてみたい。


 松原:ありきたり過ぎるんだけど、タイミングかなって思ってる。
    仕事においても仲間とか先輩とか含め、
    人と出会うタイミングとか
    自分が認められるタイミングも。
    いろんなタイミングが自分にはなかなか来ないなら
    スパッとやめるのもひとつかもしれない。
    結局、仕事って人とのつながりで、その法則とかルールって
    見えなくてもきっと存在してると思う。
    何十年も諦めずに続けるのもかっこいいと思うんだけど、
    もし、本当は疲れてしまってるなら。
    タイミングが合うものが他にあるよってサインかもしれなくて、
    ってそこの見極めが、ね。


 河村:難しいね。


 松原:うん。今、言ってても難しいなあって思う。
    最近はいろんな若い人たちと仕事するんだけど、
    彼らのやりたいことを少しだけ俯瞰で見てる自分がいてね
    すごく真面目で一生懸命なんだけど、
    それが空回りしていたり、
    現実的に到底無理なお金が必要なアイデアだったりするのを
    調整する立場になってる。
    私も気がつけば大人になっていて、
    先輩方はこんな風に私のことを見てたんだなって
    恥ずかしかったり。
    最近は雑誌も売れないからなのか
    予定調和の現場ばかりが増えてる気がして
    撮影って妄想を超えたものが出来上がってくるのが楽しいのに、
    そういう経験ができる場が少なすぎる。
    本当は若い時ってもっとワガママでいいと思う。




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